時代を先取りした~瑞雲醤油~誕生秘話

うすくち醤油発祥の地、兵庫県たつの市。
まちの中央を流れる揖保川は、夏には多くの鮎が上がる清流として知られます。
その伏流水は醤油づくりに最適な「軟水」で有名です。
この地で1879年創業の蔵元・末廣醤油は、今は珍しくなりつつある自社での仕込みを続ける数少ない蔵元の一つです。
末廣醤油株式会社 末廣卓也代表による 時代を先取りした瑞雲醤油の誕生秘話 生い立ちの記・・・ぜひご一読ください。

創業141年を迎える末廣醤油 

醤油が産業として成立したのは約400年前といわれます。大豆と小麦で麹を造り塩水と混ぜて発酵熟成させる、いわゆる本醸造醤油です。
私どもがMOA自然農法と巡り合い、今の「瑞雲醤油」の原型となる万歳醤油の醸造に携わらせていただいたのは昭和40年代です。

昭和10年代に大きく変わる「新式醸造法」

醤油業界には大きな移り変わりがありますが、約80年前、戦時体制下の日本では物資不足が深刻化し、国民の食糧事情も大きく悪化しました。醤油の原料の大豆も不足し、配給の中心は、大豆から油を搾り取った「脱脂加工大豆」となり、さらには他のタンパク原料を分解した「アミノ酸液」を使用する「新式醸造法」が開発されました。時には醤油カスを再利用して二番醤油を作ったり、豆板と呼ばれる牛馬のエサを使用することもあったと聞きます。

時代に逆行する 本醸造醤油づくりへ

戦後、効率化が求められる社会の中で、醤油の「新式醸造法」は非常に有効で、それ以降も「脱脂加工大豆」や「アミノ酸液」は原料の中心となり、市場に「伝統的な製法」を用いた「丸大豆醤油」は消えていきました。

私どもが、MOA自然農法の素晴らしい大豆に巡り合ったのは、そんな時代でした。先代と職人の心が動きます。「丸大豆醤油を造ろう。それも、時代に逆行する時間と手間のかかる天然醸造という方法で・・・・」。かなり突飛なことだったと感じます。戦前からの職人が以前の醤油造りを思い出しながら、若い技師に行程や機械の改造を依頼することもありました。醸造の失敗も少なくなかったようです。

自然農法大豆の農家と本物志向のお客様に支えられ

しかし、本当に有難かったのは、その価値を理解し応援してくださる方々、造った醤油を心から待ち喜んでくださるお客様があったことです。同時に原料は毎年自然農法を営まれる農家の方々からMOAを通じてお届けいただける。「いかに苦労があろうとも私たちは醤油造りに専念しておればいい」。本当に望みうべくもない最高の環境をお与えいただいていたのです。

その後も訪れる醤油業界の荒波

効率化に成功し大量生産が可能になった醤油は市場に溢れ、スーパーの特売の目玉になっていきました。「水より安い」醤油がところ狭しと店頭に並んでいった時代です。その後、食品のインスタント化、中食、外食化で家庭での醤油使用がどんどん減っていきました。醤油蔵は減り続け、1960年には5000軒あったといわれている工場は、平成29年のデータでは約1200軒にまで減少しております。現在も1年に約30軒が廃業しています。

生き残りをかける中での「天然醸造醤油」の再認識

各メーカーは生き残りをかけしのぎを削ります。平成に入るとトップメーカーが「差別化商品」として「丸大豆醤油」の製造販売に乗り出しました。ここでようやく、「昔ながらの天然醸造醤油」の価値が見直されることになります。
しかし、もはや国内産の大豆は入手困難です。農産物の国内自給率が大幅に低下し、加工食品原料の大部分が外国産で占め、その上、輸入農産物の残留農薬汚染問題や「遺伝子組み換え農産物」等、安全性に対する疑念などの問題も取りざたされています。

141年の歴史の最高傑作「瑞雲醤油」

私どもはMOAの自然農法に巡り合い、いち早く「伝統的製法の再現」、「国産自然農法産原材料使用」に取り組ませていただきました。そしてその結果生まれた「瑞雲醤油」は、私どもが141年の歴史の中で作り上げた醤油の最高傑作だと自負いたしております。そしてこの「瑞雲醤油」を造らなければ、末廣醤油は荒波の中でその歴史を閉じていたかもしれないとも感じています。

この感動を未来永劫に食卓にお届けしたい 

今年も私たちは、醤油の仕込みを行っています。粒ぞろいの自然農法産大豆を水に浸し蒸し上げます。豆を蒸す湯気と香りが蔵いっぱいに広がります。ふっくらとした自然農法小麦を窯で炒ります。そして、それに種麹をまぶしていきます。

料理人でも芸術家でも、いい素材に出会うときは身が引き締まると言います。私どもの蔵人も同じです。そして、自然農法の原料がどれだけ貴重なものなのかは従業員全てが知っています。

 長いもので2年近くかけての醸造。四季の温度変化の中で100年以上住んでいる蔵住みの醤油酵母たちが醸し出す醤油。私どもはこの仕事をより永く、未来永劫に続けてさせていただければ、これに勝る喜びはありません。

全ての皆様に感謝しながら、ありきたりですが「1本1本真心を込めて」醤油造りに励んでまいります。

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