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第36回MOA美術館札幌児童作品展

開催にあたって

 MOA美術館(公益財団法人岡田茂吉美術文化財団)では、「学習指導要領」に基づき、子どもたちが自然・環境、家庭や社会、他者との関わりの中で、自らの感性をもって絵画や書写に表現することで情操を養い、豊かな心を育てることを目的に、平成元年より「MOA美術館児童作品展」を開催してまいりました。
 本作品展の趣旨に、深いご理解とご賛同を賜りました多くの企業・団体を始め、家庭・学校・地域の皆様に心より厚く御礼申し上げます。

 本児童作品展は、全国2万人を超える美育ボランティアによって支えられ、さまざまな個人、団体と協力しながら、医療機関、福祉施設等での巡回展示や、年間を通じた美育活動等、学校・家庭・地域が連携し、社会全体で子どもたちを育ていくことを大切にしております。
 そして、それらの美育活動を通して、地域社会の絆を深め、心身ともに健康な活力のあるコミュニティづくり、支え合う共助社会づくりに資するよう、教育行政や自治体の協力を得ながら取り組んでおります。
 次代を担う子どもたちの創作活動を奨励し、「生命を尊ぶ心」「豊かな情操と健全な人間形成」を願い、今後とも多くの皆さまのお力添えを賜りながら、さらなる充実を図ってまいりたいと願っております。

 第36回を迎えた本年は、札幌展として応募総数1,394点(絵画545点・書写849点)の作品が寄せられ、過日、厳正なる審査の結果、「札幌市長賞」を始めとする優秀作品が決定し、9月30日~10月25日まで、MOAアートホール北海道1階ギャラリーで展示させていただきます。

 尚、絵画の部「札幌市長賞」、書写の部「札幌市長賞」は、11月下旬にMOA美術館で開催される全国展の審査に出展し、その審査にて入選以上の作品に選ばれた場合、来年1~2月に、MOA美術館にて展示される予定になっております。

 未来に羽ばたく子どもたちに、夢と希望を与えられる作品展として大きく育てていただけますよう、さらなる皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。

MOA美術館札幌児童作品展実行委員会



講 評 【書写の部】 審査員:松山和与志、太田欽舟
1.出品数
 第36回札幌児童作品展の出品数は、昨年と比べて115点減少し、849点でした。
 7年前は2,230点でしたので、急激な減少に驚くとともに毛筆習字の現状を憂えております。

2.出品作の全体的傾向
 今年も3・4年生を中心に「一字書き」が多く見られました。学校での授業の関係があると伺えます。
 今年の特徴として、学年・氏名の書き方が書写指導の基本に合わない作品が目に付きました。中には全く学年氏名が書かれていないものや、半紙作品の左側に書かれるのが基本ですが、右側や中央、最下部に小さく書かれている作品が見受けられ、まったく名前の書き方について指導されていないと思われる作品が相当数あったことが特筆されます。そのような作品の為、特別賞に入れることの出来ない作品が複数あったことを申し添えておきます。小学生への書写指導として、学年は○年と名前は姓名を小筆でしっかりと書く習慣をつけたいものです。
 また、本字の筆遣いにおいても始筆や終筆、転折(曲がり角)の基本を指導されると、毛筆を使った文字指導が充実してくるのではないかと思います。

3.奨励賞を受けた作品の傾向
 受賞した作品には、始筆(線の入り方)、終筆(線の止め方)、ハネや払いなどの基本的な筆づかいがしっかりしていて、文字の配置などもバランスが良かったものが選ばれました。さらに、線が生き生きとしていて、線の太い細いなどのメリハリが効き、書かれた文字がのびのびと見えました。特に市長賞の小田島希美さんは、しっかりとした筆遣いが目を引きましたし、教育長賞の大坪那乃葉さんは、4文字のバランスがとてもよく、基本的な筆遣いに優れていました。

4.優れた作品を完成するために心がけたいこと
⑴ 文字の中心線を気にしましょう。中心がずれるとよく見えません。
⑵ 4文字以上の作品は、横の線の右上がりの度合いが大切になります。
⑶ 毛筆の線の特徴の一つに、線が生き生きと見えるかどうかがあります。毛筆で文字を書くときは、ある程度勢いをもって書いてください。しかし、勢い余って線がかすれすぎると、投げやりに書いたと感じられ、雑に書いたと見えたりしてしまいます。
⑷ 文字の大きさは、大きいほうが見ばえがするのですが、無理に大きくしすぎると文学が重なって見えてしまうなど作品のバランスを崩すことにもなるので注意しましょう。
⑸ 名前は、フルネーム(○年 山田太郎)でしっかりと書いてください。書く場所についても指導される先生に聞いて、難しいですが、毛筆(小筆が書きやすいでしょう)で書きましょう。また、名前がしっかり書けているかどうかも審査の大切な要素であることも付け加えておきます。

このMOA美術館児童作品展をきっかけとして、文字を大切にする子供たちが増えることを願っています。


講 評 【絵画の部】 審査員: さとう綾子、高橋玲香

 今年も、子どもたちの伸びやかで、感性豊かな作品に出会えることを、心から楽しみにして審査に臨みました。

 出品数は545点。なかでも、2年生が260点と最も多くを占めていましたが、少ない学年からも心を動かされる優れた作品が数多く見られました。
 どの学年にも、それぞれの個性と独自の感性が輝き、子どもたちの可能性の広がりを実感致しました。
 審査を進めていく中で感じたのは、優れた作品は一目見ただけで強い存在感を放ち、ひときわ輝いて見えるということです。実際、二人の審査員が同時に同じ作品に自然と目を留め、評価が重なる場面も少なくありませんでした。子どもたちが心からの「描きたい」という思いを、まっすぐに表現しているからこそだと思います。
 魅力ある作品に共通するのは、色や形の独自性、作者の思いが伝わってくること、そして隅々まで丁寧に書き込まれ完成度が高いことです。一枚の絵にじっくり向き合い、より良く表現するために工夫を重ねることが、作品を豊かにしていくと感じました。

 札幌市長を受賞された作品は、そうした魅力を凝縮したものでした。重ねられた色が奥行きを生み、緑の中に自分の色を探し出した跡が見られます。補色のピンクは緑を引き立て、青や赤も画面にバランスよく配置され、美しさと変化が共存しています。鑑賞する人を幸せな気持ちにさせる完成度の高い作品であり、大きな感動を与えてくれました。

 最後に、これからも絵を描いていくみなさんへ、大切にしてほしいことがあります。
 絵に間違いはありません。自分の見方や感じ方を大切にし、自信を持って表現してください。
 そして、「何を伝えたいのか」をはっきり意識し、見る人に届くよう工夫を重ねてください。
 また、保護者のみなさんには、お子さまの作品をご家族で語り合い、素晴らしいと思う点をたくさん褒めてあげて下さい。お子さまの作品をお部屋に飾っていただくのも大変素敵です。
 そのような積み重ねが、子どもたちの自己肯定感を育み、やがて大きな自信となっていくことでしょう。


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